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  • 2022年01月18日銅板屋根について

    銅板屋根について

    銅板屋根について少しお話させていただきます。日本では奈良時代に初めて銅製の屋根が建造されたという記録がありますが、多くの建物に金属の屋根が登場するのは江戸時代頃からといわれています。江戸幕府のもと、様々な技術が開発され、城や神社・仏閣に普及していきました。羽振りの良い武家や商人が住まいの屋根を一種のステータスとして銅板屋根にしたようです。

    有名な建造物。

    お寺屋根

    現存する最も古い銅板屋根の建造物ですと栃木県の「日光東照宮」があります。徳川家康の霊廟として1617年に建てられ、400年以上屋根として機能を果たしています。その他にも銅板屋根の建造物で抜群の知名度を誇っているのは、大阪城と名古屋城ではないでしょうか。どちらのお城も美しい「緑青」の屋根が印象的です。少し話が逸れちゃいますが「緑青」と書いてどう読むか?です。ネットで検索しますと「ろくしょう」と書かれている方が多いですね。ですが当ブログ筆者が昔から馴染みのある呼び方は「りょくしょう」なんです。先人の方々からそう呼んでおられていて、伸銅業界でも少なからず「りょくしょう」で通っているようです。どちらが正しいのかはハッキリと分かりませんが、どちらも正解でいいような気がしますけどね。「さけ」と「しゃけ」のように。なので独断と偏見で当ブログでは「りょくしょう」で貫きたいと思います。話をお城に戻しますが、かく言う筆者は大阪市東成区の出身でして、大阪城とは目と鼻の先な距離感で育ちました。そのおかげで地元びいき甚だしいですが、大阪城と名古屋城、ビジュアル勝負となった場合には、やはり大阪城に軍配が上がると思っています。全国各地の数あるお城の中でも大阪城はトップクラスのビジュアルだと筆者は信じています。名古屋城も良いお城ですが、ビジュアルに関してのライバルといえば、やっぱり姫路城だと思います。筆者も実物の姫路城を見た時には確かに見とれてしまいました。ものすごい美しさでした。ですが何と言っても我らが大阪城、あのフォルム、虎のデコレーション、そして都会のビル群に囲まれながらもあの凛々しい佇まいは他の追随を許さない美男子ナンバーワンとさせていただきます。性別も勝手に決めさせてもらいます。大きく話が脱線してしまいましたが、そもそも銅板はピカピカです。そこから時を経て、「緑青(りょくしょう)」へと変化していくんですが、綺麗な緑青の状態になるには20年以上かかるそうです。この経年についても日本のような春、夏、秋、冬と色々移り変わる気候風土が適しているようで日本の緑青は唯一無二なんだと思います。

    メリット、デメリット。

    メリット、デメリット。

    それでは銅板屋根のメリット、デメリットについてです。まずメリットでいいますと非常に耐久性に優れていて、薄く、軽く、加工がしやすい。そのうえ耐震性にも優れています。耐用年数も粘土瓦と同程度かそれ以上ともいわれています。それに加えて銅板に雨漏りがない限りメンテナンスは必要ありません。それと銅には「銅イオン」が含まれています。銅イオンには活性酸素のパワーで細菌や雑菌の分子を破壊してしまうという効果があります。この抗菌効果の事を「微量金属作用」といい、この微量金属作用によりカビやコケが発生しにくいだけでなく、藻の発生も防いだり、汚れが付きにくいという屋根材にとって嬉しい効果があります。それと先ほどから何度となく話題になっています「緑青(りょくしょう)」です。この緑青は要するに「サビ」です。ですが他の金属のサビとは違い、表面に被膜を作り、内部への腐食を防いでくれます。そして年数が経つほど独特な「風合い」が出てきます。さてここまではメリットのお話でしたが、デメリットにも触れておきます。大きく3点としますが、1点目は何といっても銅は高価です。相場により上がったり、下がったりしますが基本的に高価な金属です。2点目はといいますと専門の施工業者さんが少ないということ。このご時世なかなか現実的な厳しい問題です。最後3点目は遮音性が低いということです。雨が降るとうるさいです。金属の中では銅は柔らかい方なので、他の金属に比べるとマシな方らしいですが、なかなかどうしてうるさいんだと思います。

    葺(ふ)き方いろいろ。

    葺き方いろいろ

    屋根葺(ぶ)きの種類で代表的なものをご紹介しますと、まずは「一文字葺き」。銅板を水平方向に葺いていく横葺きの一種。神社やお寺の屋根に多く採用されています。続いて「菱葺き」。正方形にカットした銅板の四辺を折り曲げ、菱形になるように銅板同士を組み合わせた葺き方。最後に「亀甲葺き」。亀の甲羅のように銅板を六角形に加工して葺き上げていきます。一枚の銅板のサイズが比較的小さいため加工に手間が掛かり、施工費も高額になります。

    銅板葺きを施行する際は下地に防水シートを施行したのち、「吊り子」と呼ばれる金具を使用して下地に固定していきます。吊り子の片方は銅板を折り曲げて接合したハゼで巻き込み、もう一方を下地に直接釘で固定します。ざっとこのような感じが施行の流れとなっております。

    当サイトの別ページにもご紹介しておりますが、銅板には製造方法により様々な種類があります。無酸素銅、タフピッチ銅、りん脱酸銅などです。その中でも柔らかく、伸びも良い、もっとも板金加工に適しているのが「りん脱酸銅」です。屋根材など建築用として主にこの「りん脱酸銅」が使用されています。奈良時代から現代まで使い続けられているのも改めて考えますと凄いことだなと思います。

    最後となりますが、遠い昔から受け継いできた技術、そして進化し続けている技術もあるかと思います。機械では表現出来ない匠の技を持った職人さんには、これからもずっと活躍してもらいたいと願っております。

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