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  • 2021年12月15日銅製で小さいボトルケースの製作依頼。

    お客様より某有名雑貨屋さんの透明ボトルを純銅製で収納ケースを作りたいとお問合せいただきました。

    加工方法あれこれ。

    当初はヘラ絞りによって成形を検討しまして、いつもお世話になっておりますヘラ絞り屋さんに相談しましたが、お客様のご要望の形状は加工困難となりまして違うアプローチでまた加工法を思案となりました。ムクの丸棒を切削するなど案に上がりましたが、コスト面を考えますととても現実的ではないと予想され、この加工法は却下となりました。そこで浮上してきました加工案がパイプの「スパン加工」という方法です。

    試作完成までの道のり

    パイプの端面を金型へ押し込み、キャップ状に成形するやり方で、完全に塞がることは出来ませんがかなりご希望の形状に近づける加工法です。ですが、通常のスパン加工される銅パイプのサイズは外径も今回の案件のサイズよりも小さく、パイプの肉厚も薄い為今回のサイズが加工可能なのかという壁にぶち当たりましたが、加工屋さんの技術で何とかクリア。そこからも課題は山積みで、ケース本体とキャップの結合部の構造や、ケース本体に中のボトル残量がチェック出来るのぞき穴、お客様の社名刻印、表面処理などがあります。ご希望の品に到達するには長い道のりとなります。お客様も早く手に取って実物を見てみたいとも仰ってましたので、試作品に取り掛かることとなりました。まずは実際にお客様が中に入れる想定の透明ボトルを購入し、銅パイプもどのサイズが一番適しているのかを確かめるべく、弊社長年お世話になっておりますパイプ屋さんに協力していただき、実物ボトルを持参して実際パイプに差し込んでみて規格サイズを選定しました。外径28.58φx肉厚2.0ミリをケース本体にし、外径28.58φx肉厚1.0ミリをキャップにすることを決定しました。それぞれスパン加工で片側を塞いでもらい、次に機械加工屋さんにケース本体の外径上部を削ってもらってキャップがはめ込めるように加工してもらいました。この時にも機械加工屋さんの協力で、外径を削る際にほんの少し肉を盛ってもらい、そこにキャップをはめ、抜けにくくする工夫を考えていただきました。キツすぎることなく、ゆるすぎることもなく、ちょうど良いハマり具合に仕上げていただいたのは、さすがの一言です。

    銅製ボトルケース途中経過

    窓抜きも良い感じに仕上がっていました。さて次のステージは第一段階の表面処理、バレル研磨です。バレル研磨上がりたては、触り心地がとても良くて、キャップのハマり具合も一段と滑らかになり、色味も均一になっていて非常に綺麗に仕上がっていました。工程も中盤に差し掛かり、次のステージへ進みます。そこで立ちはだかるのが社名の刻印です。こちらはサンドブラストという砂などの研磨材を吹き付ける加工です。こちらも無事に終え、残すところは最終工程のトップコートによる表面仕上げのみとなりました。

    銅板色見本

    銅生地のままだと指紋や細かいキズなど短期間で様変わりしてしまいます。触ったあとに必ず発生する黒ずみも味わいと捉えていただく方もおられますが、せっかくなら銅の綺麗な色合いを長続きさせたいと思うのも心情です。という事でお客様には後者をお薦めしました。かなり長い道のりでしたがようやく試作品が完成いたしました。早速お客様にお届けしまして、直接手に取って見ていただく時がやってまいりました。

    銅製ボトルケース試作品

    無事お届け出来ました。お客様の反応は?

    お客様の反応は?と申しますと…銅の質感、加工の仕上がり具合など、ものすごく満足していただけたようでした。が、やはり気になる点もあったようで、まずはコスト面。材料が純銅ということもありますし、加工初期段階のスパン加工は通常よりも外径、肉厚共にサイズが大きい、それによってリスクが高まる、各加工が分業制となってしまい、加工賃が重くのしかかりました。そして何より一番気にされていましたのが「重さ」です。結果的にはこれが一番重くのしかかりました。中に入れる透明ボトルのサイズが決まっていましたので、おのずと銅管のサイズが限られます。軽量化を目指して肉厚を削るなどしてしまいますと余計に費用が膨れ上がります。コストダウンかつ軽量化は壮大なテーマとなりました。本来でしたら男女問わず使っていただきたいボトルケースですが、男性にとってはズシッと存在感のある方がカッコいいと思っていただける方も少なくはないはず、ですがやはり女性にとっては「ごつい」イメージが強いようです。おっしゃる通りだと思います。ケース本体とキャップを合わせますと重さが約130gでした。びっくりドンキーのハンバーグを少し小さくしたぐらいです。ちょっとわかりにくいですが、そのハンバーグが手の平に乗せられたとするならばなかなかな重量感かと思います。ちょっとわかりにくいですが、そのハンバーグが女性の方が持っておられるようなバッグの中に入っていたと想像しますと、重量感とはまた別の問題があると思いますが、まあまあ気になる重さだと思います。冒頭に書きましたいろいろな加工方法があり、その中から最適な方法を見い出し、各加工も完成品に向けてズバズバ快進撃が止まらないと信じていましたが、最終的にはスティーブ・ジョブズがiPhoneの試作機を水没させて「泡が出るのはまだ隙間があるということだ」と技術者に言い放った逸話が頭をよぎりました。ひとまず喜んでいただいたのは救いでしたが、加工は奥が深いと痛感しました。現在は再アタック中です。頑張ります。

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